硝子、この不思議な物質

どのような呼び名があったのでしょうか?

最近のトピックス

ハワイにある日本の天体望遠鏡

スバルの反射望遠鏡のガラスはコーニングのチタンケイ酸ガラス(コードNO、7971)
で、研磨は世界一の研磨技術を持つコントラベス社、ガラスの線膨張係数は10億分の1、と、
もの凄く小さい。1.5mの正六角形の40枚の鏡を融着して一枚に仕上げたそうです。
直径は8.2mで厚味は20cmとのこと。すごい技術ですね。

はじめに
人類とガラスとの出会いは 紀元前五世紀ほどの頃からだと言われています。ガラスは人類と7000年ほどの付き合いをして来た事になります。私達はこのガラスをライフワークの一つとし『ほんまもの』と付き合いできることを幸福だと思っております。

ガラスの定義 [狭い定義]
 熔解物を結晶化することなく冷却して得られる無機物
(1) 結晶でない。
(2) 熔解物の冷却によって作られている。
(3) 無機物質である。
しかし,この定義では,例えば光通信ガラスファイバーはガラスでない事になる。気相から反応蒸着によって作られるので (2)の熔解物でない事になる


[広い定義] ガラス転移現象を示す 非晶質固体。
1) 非晶質固体であること.

2) ガラス転移現象であること.
ガラス転移とは,ガラスを過熱するか,またはガラスになる過冷却液体を冷却した時その物質の融点又は液相温度の2/3〜1/2の温度付近で,熱膨張係数や比熱容量突然変化する温度,"ガラス転移温度が存在すること。ガラスは過冷却の液体である。との言い方もできる。(ガラスの事典より)

ガラスの不思議
※ ガラスはなぜ透明か?
硝子は(水も同じだが) なぜ透明なのかこの質問に対しての答えは余り簡単でない。通常物質は,結晶が寄り集まって構成されているので,その結晶の境目(粒界という)がある。例えばアルミナは 1ミクロン程度の粒子が集まっている.可視光の波長はこれより短いので光りはアルミナの粒子にぶつかって散乱され,白く見える。ところが水は光りの波長より千分の一も小さい分子でできているので 光りは水の分子に妨げられない ガラスも又水の分子の二倍程の酸化珪素分子でできていて,それが無限につながり境目がないため,光りが散乱される事はない。             詳しくは (東洋経済新報社ガラスあれこれ)参照の事

(1) ガラスの分子は光りの波長より十分に小さい。
(2) 酸化珪素の分子が無限につながっていて境目がない。

※ ガラスは固体? 液体?
過冷却の液体である。 自然界では ガラスはほとんど存在しない。
     僅かな例外として 黒曜石と隕石ガラスが有るだけ
※ ガラスはなぜ割れる
なぜ脆いのか? 何とか割れないガラスができないか。長い間研究が続けられてきました。そして分かったことは, 
ガラス表面の微小な傷(クラック)が割れる原因だと言うことです。
物が割れるということは、ガラスの場合珪素と酸素の結合が切れると言うことです。
ところが この結合の力が大変強くよほど相性がよいのであろう。
この結合を切るのには1ミリ四方で1トンの力を要するのです。(子供の頭に一万トンの船がのった様な力)
しかし、現実には通常のガラスはその百分の一の力で割れてしまいます。これは,ガラスの表面に,目に見えない無数の傷が存在するからです。その傷の一つに力が集中してそこから傷が伸びていき成長し破壊が発生するのです。過冷却液体のガラスは その他の固体構造に特有の結晶の粒界が無いため,そこで傷の延長が食い止められないのです。

ガラスの見えない傷「グリフィス・フロー」
ガラスの強度にばらつきがあり、その原因は見えないほどの
徴細な傷であると考えられています。この傷は幅が数100Aか
ら1,000Aまたはそれ以下で光の波長より短いため、光学的に
とらえることはできません。しかし、ガラス面をふっ酸で処理
すると、ふっ酸が傷にしみ込んで傷の幅を広げますので、顕微鏡
で見ることができます。これが下の写真ですが、こうしても
まだ見えない傷があります。発見者の名前にちなんで
「グリフィス・フロー」とよぱれ、原子より少し大きい程度
と言われています。
※ ガラスは電気の絶縁体

※ ガラスは熱の絶縁体

※ ガラスは水に溶ける
ガラスは、僅かながら水に溶けるのです水蒸気などがガラス表面に
水滴として付着し,この水に溶けてガラス中に含まれるナトリュウム
イオンと水の中の水素イオンと交換して,水が水蒸気などで除かれた
後ガラス内部と異なった表面層が出来上がる
これが
青ヤケ 干渉色
白ヤケ アルカリやシリカの析出物 硝子がヤケルということは、この事です。


一般建築用板硝子の種類等

(1) 普通板硝子
a)透明硝子  コルバーン,フルコール 
b)型板硝子  ロ−ル アウト
c)網入硝子  ロールアウト カレンダー
(2) フロート板硝子
a)透明硝子  フロート法 
b)色硝子   フロート法
☆コルバーン フルコール法
現在日本ではこの方法での板硝子の生産は ほとんど製造されていない。
国内メーカーでは
コルバーン
日本板硝子はコルバーン方式で 過去は硝子を生産していたベンディングロールで水平に引き出すために除冷区間が長く取れるので柔らかい粘りのある透明板硝子であった。
フルコール
旭硝子はフルコール方式で 垂直に引き出すために高い建屋の工場で硝子は除冷区間が短いために固く, さくい板硝子であった。唯一つの窯から硝子取りだし口を複数設ける事ができる特長があった。


これらの2つの方法は ある程度平滑度の高い硝子であったが 鏡などに使用するのには磨き工程を設けてより一層表面を滑らかにする必要があった。*現在でも外国でこれらの方式で生産しているところもある。


☆フロート法
英国のピルキントン社で発明された画期的な板硝子製造法で、硝子の比重が溶解錫より軽いことに着目して溶解錫の上に硝子を流し 上部面はバーナーで硝子自身を溶解させ取り出された硝子はゆがみもなく そのまま鏡にも使用可能になった。今や世界的にもこの方法が 主流になってきている。

その他の特殊硝子の主な製法 (ニューガラス)

☆ヒュウジョン法  (Fusion)
Fusionとは英語の訳からは単なる溶解をさすが次図に示されるようにこの方法は硝子面には窯材などの不純物に触れることなく製造されるので硝子表面の物性的な信頼性が非常に高い。 
大きな用途としては液晶ディスプレイ用の 硝子 特にカラー液晶のディスプレイには最も適している1991年現在では米国にコーニング社のガラスが日本に入ってきてこれらの液晶用の硝子の需要の大部分を供給している。日本板硝子(株) も保谷硝子と共同開発してNHシリーズとして試作出荷をしている。欠点として製法上硝子が合わさるところに、微小な泡の混入が問題になる事がある。コーニング 7059NH−45(日本板硝子と保谷硝子)等が市場に出回っている。

☆ダウンドロー法

この方法は 薄い硝子を生産するのに向いている。旭硝子が宇宙衛星の太陽電池のカバー硝子に0.05ミリ厚の硝子を供給したことで有名である。弊社がタッチパネル用のカバー硝子として供給しているのも この方法で生産された0.2ミリの硝子である。供給できるメーカーとしては、米国のコーニング ドイツのショット社グループのデザーグ、そして日本の旭硝子ぐらいで、世界でも生産できるメーカーは非常に少ない。現在のところの一番大きな用途は、医療検査用,顕微鏡などのカバー硝子,タッチパネル等である。

☆リードロー法

この方法は生産法と言うよりも二次加工の方法であるが 上記ダウンドロー法は高度な溶解技術と設備が必要なため 現在存在している厚い硝子を(1ミリ,2ミリ)等を使い熱をかけながら横に引張り、硝子厚の薄い硝子を作る方法である。日本電気硝子の連続リードロー等は日本国内でも最も優れた製造技術であろう。 0.1, 0.2 0.3等の硝子厚の生産が可能である。用途は液晶ディスプレー タッチパネル他

☆ これらの薄板と呼ばれる硝子は、今後益々電子部品関係等に、非常な関心を示されている。

◎熱溶解を使わないガラス製法
☆ゾルゲル法
溶液からゾルゲル変化に基づいて 製造する方法特長
  1. 従来の溶解による方法と違ってガラスをより低温で作る 事ができる。
  2. 結晶化が起こるような高温で過熱する必要がないので 従来 作る事ができなかった新しい組成のガラスを作る事ができる。
  3. 原料精製 が容易なので純粋なガラスを作ることが出来る。 石英ガラス,無機ー有機複合体のコンタクトレンズ材料などの用途に挑戦されている。(ガラスの事典,ガラスあれこれ,より)

☆気相合成法(CVD法)

石英系ガラス光ファイバーの製法の一種で、コーニングが開発,現在では損失特性が0.2デシベル/Km
(100Km で光強度が百分の一に減衰)が達成されている。
◎材料組成によるガラスの種類
A)ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)
B)ホウケイ酸ガラス
C)鉛ガラス
D)その他酸化物ガラス
A)ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)
ソーダ石灰ガラスは,成型が容易であり、化学的耐久性にも優れ、かつ原料が入手しやすく安価である。歴史的にも技術的にもガラスの基本である。用途 板ガラス,びんガラス等
B)ホウケイ酸ガラス
ホウ砂B2O3を材料に混入したガラスで、重要な特性で低膨張性及び化学的にも安定している。又色収差の解消のためにショットが1883年に新しい光学ガラスを作った。
a)低膨張ガラス
ショットにより膨張係数が約60(X 10-7/0C)の低膨張ガラスで1893年には熱ショックに耐えるガラスとして,当時発明された白熱ガス灯の『ほや』ガラスに用いられ,空前のヒット商品となり,エジソンの白熱灯が普及するまで街路灯にもちいられた。現在も新しいテクニカル硝子として注目をあびている。弊社のタッチパネル用ガラスはこの商品の一部である。
b)パイレックス
エジソンの電球バルブの生産を手がけていた米国のコーニング社が(Corning Glass Works)が鉄道信号系のバッテリー用ガラス容器として,熱ショックに耐えるガラスとして開発された。1912年には熱膨張係数(X 10-7/0C) 36のホウケイ酸ガラスが開発され1915年には急熱,急冷に極めて強く,化学的耐性に優れた(酸化鉛の含有がない)パイレックス・オーブンウェアとして販売された。
c)理化学用ガラス
第一時大戦が始まると、米国に対するショット社から理化学ガラスの供給が止まったため、コーニングのパイレックス・オーブンウェアの開発過程の試作ガラスがショット社の物よりすぐれた理化学ガラスであることがわかり,コード番号7740の32 X10-7/0C のガラスがコーニングから供給されるようになった。
d)中性ガラス
最初の注射用アンプルのガラスとして1910年にショット社により開発されアンプの中の水素イオン濃度が長期保存後も変化しない事から アンプル用ガラスを中性ガラスと呼ぶようになった。現在は紫外線吸収のアンプル用ガラスなどがある。
e)電子管用ガラス
真空管等の電子放出電極にタングステン,モリブデン,コバール等が用いられるがこれらの電極封入用ガラスとしてホウケイ酸ガラスが用いられる。膨張係数( X10-7/0C)でタングステンは36,モリブデンで55,またコバールで50でホウケイ酸ガラスとほぼ似た膨張特性をもっている。
f)96%シリカガラス
ホウケイ酸ガラスの高熱処理などから コーニングは1939年に,この高シリカガラス(96% SiO2)をバイコール(Vycor)の名前で販売を開始した。バイコールは石英ガラスに似た膨張係数を持ち 理化学用,蛍光体焼成皿,水銀灯,殺菌用ガラス管などに用いられている。いわゆる耐熱ガラスとしての用途である。
C)鉛ガラス
a)クリスタルガラス
クリスタルに似た無色透明のクリスタルガラスは鉛ガラスで,国際的慣習からPbO24% 以上,屈折率1.545%以上のものされている。
b)光学ガラス鉛ガラス
高屈折率,高分散用のレンズとして用いられる。
c)放射線遮蔽ガラス鉛ガラス
はX線遮蔽用ガラスとして用いられる。英国のピルキントン社,日本電気硝子(株)等が国内に供給している。e)エレクトロニクス用ガラスCRT(ブラウン管)の全面に結晶性フリットでファンネル(漏斗状ガラス)と封着される。X線の遮蔽の用途である。電気、電子用途で使用される理由電気抵抗が大きいこと 粘度と比熱が小さく加工温度が低いことガス放出が小さく管球材料として好都合なことX線(放射線)遮蔽能力が大きい事など
D)その他酸化物ガラス
(1) アルミノケイ酸ガラス
特性 * 膨張係数 30〜60 X 10-7/℃* 化学的耐久性のうち耐水性は窮めてよい* 粘度は溶解硝子の温度が下がるにつれて急激に高くなるので硝子  繊維のように成型性がショートなものに適している。* 軟化点が900℃と非常に高く耐熱性を求められる用途に適している。* 引張り強度はソーダガラス繊維に比べて25%高い
a)Eガラス
もっとも多量に生産されているアルミノホウケイ酸ガラスはEガラスである。FRPパイプ等に用いられている。
b)Sガラス
Eガラスより引張り強度が33%も高く弾性率は約20%高いロケットのエンジンケース等に用いられている。
c)燃焼管ガラス
最高使用温度が高いため、ストーブのパーコレーター等の厨房ガラス,バルブ温度が高くなる高負荷電子管,ハロゲン電球などに使用されている。
d)フォトマスク用ガラス
ICのパターン描き込みに用いる。

 

(2) ホウ酸塩ガラス
a)低融(ハンダ)ガラス接合用ハンダガラスとして利用されている
b)中性子線遮蔽ガラス原子炉関係の窓硝子として使用されている。
(3) リン酸塩ガラス
a)バイオセラミック用人工骨,歯の永久歯根などの開発があり バイオセラッミクスとして期待できる。
b)オプトエレクトニクス用レーザーガラスとして有望視されている。光りメモリー,紫外線透過用,X線γ線線量計用,近赤外線(熱線)吸収用に実用化されている。

この様にガラス組成の異なるガラスを、ショット,コーニング社などは 50000 種にも及ぶと言っております。

* 超音波ガラス遅延素子
ビデオカメラ,ビデオディスク,衛星テレビには無くてはならないガラス製品なのです。1940年にレーダー用としてショット社のガラスが検討されたのが最初です。
*  ファラデー回転ガラス
光アイソレーターとして これからの光通信,レーザー核融合などに無くてはならないガラス

* 結晶化ガラス

ガラスは普通は過冷却の液体として存在するが 冷却条件の及び過熱条件の設定により石英を中心に結晶化させる。
商品名として ネオセラム(旭硝子) 電子レンジ
用容器,耐熱食器,鍋,釜等

  ネオパリエ(日本電気硝子)外装装飾用不燃建材
  ファイヤーライト(日本電気硝子)防火硝子 

* 紫外線をあてて 写真のようにガラス表面に模様,穴あけ(自由な角度で)できるガラス,私達の知らないところで、今ガラスはニューセラッミクスとして脚光を浴びている