3)住宅の性能を左右する窓

窓には“心”という字がついている。窓は居住環境を大きく左右する“かなめ”になる重要な部位である。

窓は外と内をつなぐ部位であり、必要に応じて、外を室内に取り込んだり、遮断したりすることのできる可変部位である。

取り込む例としては

@自然を取り入れる
(外を眺める)
A太陽を入れる
B風を入れる
C音を入れる
(鳥の鳴き声、風鈴の音、風・川の音)等がある。

一方が遮断する例としては

@夏の強い日差し
A強すぎる風
B雨
C騒音等である。

ところで日本には世界に誇る四季が、さらに先進国と言われる国には珍しい強烈な蒸暑があるため、それらの季節における性能がどのようになるかが大きなキーポイントである。春や秋には外の風を部屋中に入れて室内を隅々まで乾燥させ、部屋中に爽やかさをもたらすのが日本の住まい方である。特に寒地以外の地域では、多少寒くても、あるいは少々暑くても大きな開口部を全て開放して、外の空気・風に触れるのが体に良いことを知っていた。それが日本人の住まい方の原点でもある。とりわけ夏でも盛夏以外の時期には、できれば冷房などしないで扇風機か団扇で涼を取るのが健康的な住まい方であり、特にお年寄りに、ことさらこの意識が強い。それらを可能にしていたのは大きな開口部である。

これからの住まいは、上記のような四季を住まいに取り組み、それぞれの季節を味わいながら、盛夏・真冬時には弱者も住んでいる住まいを外部の寒暖からプロテクトできることが要請されている。そのためには開放可能にしつつ、閉じれば高性能住宅に変容できる住まいづくりが望まれる。高性能住宅の実現化の“かなめ”は窓である。冬季には複層ガラスの使用によって省エネ化を図り、部屋の上下のバラツキをなくし、部屋間の温度差もなくすことができる。特に、段差解消が求められているバリア・フリー住宅ではお年寄りの室内相互間の移動が容易になるため、開口部を含めた家全体の断熱化が不可欠となる。また、複層ガラスは、遮熱、遮音などの機能も付加できる上、結露を防ぎ、カビやダニなどの発生を抑えるという健康住宅づくりにとって重要な役割を持っている。従来、わが国の住宅では開口部の機能として開放性のみが強調され、断熱・遮熱・遮音などの遮断性能が軽視されていた。その結果、開口部からの熱の出入りが多く、室内の温熱環境を向上させる上からは最大の弱点になっていた。

ところが最近ガラスとガラスの間に空気層をつくり、その空気層の熱の伝わりにくさを利用して断熱性を高め、結露を防ぐ複層ガラス(遮熱)ガラスが透明な断熱材料としてその普及率を伸ばしている。ドイツ、アメリカなどの欧米諸国では、新しく建てる住宅の80%以上は複層ガラスを使っており、お隣韓国でも、複層ガラスの利用を行政レベルで義務化している。省エネルギーと室内環境を向上させる意味から、健康住宅の“切り札”といわれる複層ガラスは、今後ますます広く利用されることになるだろう。