トピックス 乙防木製建具の開発 吉田桂二(連合設計社市谷建築事務所) 都市防災の見地から,市街地では準防火地域に指定されている地域が多くなってきた。こうした地域の建築物の開口部には、乙種防火度(以下、乙防と表記)の設置が必要とされる。 通常のアルミサッシについて乙防認定はないが、網入りガラスをいれたものについては確認が下ろされている。サッシ自体は燃えないという見解によるものだ。アルミサッシは,燃えないとはいえ火をかぶると溶解してしまうものだが、慣習として1通っている。 一方、アルミサッシより長時間,内部に火をいれないという実験結果を得ている木製サッシは、乙防認定を取らなければ準防火地域で使うことはできない。 木製サッシの普及を考えた場合、これは大きな障害になる。そのため木製サッシのメーカーは、どこも乙防認定を取ることを大きな目標にしている。 40mmの枠見込みで防火性を確保 ここで紹介するのは、加茂建具協同組合と組んで開発した防火型サッシである。 乙防認定を取るにはどんな手段があるか。まず耐火塗料を塗る方法が考えられるが、これは実験してみた結果、失敗だった。耐火塗料が極めて高価であり、また木製の良さを失ってしまうという短所もある。しかし、こうした要因に目をつぶるとしても、そもそも所定の時間をクリアすることができなかった。 結論を言うと、木製サッシで乙防認定を取るための手段は、次の2点である。建具の見込みを40mm以上確保する、熱によって膨張するパッキン材を建具の周囲に巡らせて建具のすき間から入る火を防ぐ。 木材は燃えるけれども、表面から内部に炭化が進行するには、当然、酸素の供給を必要とする。 こうした酸素の供給は、表面では多いが,内側にいくにつれて減少する。表面から20mm進んだところで燃焼が進行する速度は極めて遅くなる。これが着眼点であった。したがって、通常は30mm程度でも済む建具の見込みを40mmとした。 熱によって膨張するパッキン材は、目下のところドイツ製のものが使われている。建具のすき間を防ぐということも非常に重要なことであり、すき間があると火は楽々と内部に燃え移ってしまうからだ。 建具の見込みを大きくすることは、建具を重ね使いした場合、枠全体の見込みも相当に大きくなることを意味する。これはコストの上昇を伴うから、アルミサッシとの競合という点でマイナス要因になることは否めない。 |
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●サッシデータ 対風圧性の:S5 気密性能:A−3 水密性能:W−2 熱貫流率:4.8kcal/u・h・c 製造:加茂建具協同組合 |
※参考文献 窓まわりのディテール 日経BPムック(H10.5.25発行)
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